甘い体温


『陽生?』


さっきから度々溜息を吐く陽生に違和感を覚えた私は、不意に陽生の顔を覗き込んだ


するとそんな私に気づいた陽生が少し気まずそうな視線を向けて


『ん悪い…なんでもねーから』


『なんでもないって…
そんな感じには見えなかったけど?』


私はさらに陽生の顔をじっと覗き込む


あんな溜息吐いて、明らかに何でもなくはないと思うんですけど…?


だけど…


『本当に大したことじゃねーから心配するな…
ただちょっと、親父とは昔から折り合いが悪いっていうかなんつうか
まあ…そんな感じなだけだから…』


『え?』


思わず私の口から声が漏れる


折り合いが悪いって…



『…喧嘩中…なの?』



あっさりと言うけど、それって結構大したことなんじゃ…



『はは、喧嘩か…そんなもんした記憶もねーなぁ…』


『え?』


『いや、何でもない。本当にそんな大したことじゃねーから気にするな
それに果歩がそんなに気にするほど実際仲悪いって訳でもねーし、だから大丈夫だ、な』


そう言うと陽生はもうこの話はお終いと言うように、私の頭をポンと軽く叩く


そして陽生はその手を下に降ろし私の頬を安心させるように撫でると、覗き込む私に穏やかな表情を向けた


そんな陽生の手の温かみを感じながらつられるように私も少し顔を崩す


正直、その笑顔を見ながら「でも…」と喉まで出かかりそうになったけれど、それをぐっとまた喉の奥に無理矢理押し込んだ


その瞬間何となく悪い後味が残る


けど、これ以上はもう何も聞かないことにした


誰だって一つや二つ、聞かれたくないことぐらいあるのは当たり前で


それを無理矢理聞く趣味は私にはない


陽生本人が大丈夫っていうのに、私がうじうじ気にするのも可笑しな話し


それに、それこそ私がいい例だ


自分の家のことは聞かれたくも無ければ、話したくもない


その気持ちは私が一番良く知ってる