甘い体温


『あ…でも一つだけ…』


そう言えば、前からずっと気になってたことを思い出した私は


陽生の瞳を見つめたまま、少し真剣な表情を向けた



『お金の使い方はもうちょっと考えた方がいいんじゃない?』


『え?』


『いくらお金に余裕があるからって、もっと計画的に使った方がいいと思うんだけど?』



実は前からこれだけは言いたかったんだよね


だって陽生のお金の使い方って、正直、半端じゃない


この前の旅行の時だってそうだし


普段一緒に買い物に行く時もそう


服やら食料品やら、次から次へと手に取った物を購入する陽生


しかも品物を良く見る訳でもなく、ちゃんと試着することもない


直感的に気に入ったら即カードでお支払い、みたいな感じ?


私はいつもそれを、あ然としながら横目で見てる


いったい、月にどれくらいお金使えば気が済むのって感じで


仕舞いには「これで好きな物買え」と言って、私に自分のカードを持たせようとする始末


さすがにそれは断固として断ったけど、正直これってどうなの?


もう金銭感覚が違いすぎるというか、おかしいとしか言いようがない


金持ちって奴は、みんなこんなもんなんだろうか?


私にはさっぱり理解出来ない世界だし、理解したくもない


そりゃあ、確かに陽生のお金だから、陽生がどう使おうかそんなの勝手だし私がとやかく言うことじゃないかも知れないけどさ…



それでも、なんか…ねえ?



さすがに限度ってものがあると思うんだけど…


そんなことを思いながら陽生をじっと見つめていたら


今までずっと黙って私を見ていた陽生が、突然ふっと口を緩めた