甘い体温


『俺のこと…どう思った?』


『え…どうって…何が?』


何故か気まずそうに言葉を繋ぐ陽生の瞳を、私は真っ直ぐ見つめ返した


『陽生?』


『…いや…だから、俺が…』


不意に見つめた陽生の瞳から、珍しく動揺の色を感じて…


そんな陽生に困惑しながらも、その瞳から陽生の言いたいことを何となく感じ取った私は、とっさに思い浮かんだ言葉を陽生に投げかけた



『陽生が椎名グループの息子だってこと?』



その私の言葉に、陽生は一瞬驚いた表情を見せたけど


『…ああ、まあ…』


私の核心をついた言葉に、陽生は少し言葉を濁すと、私から不意に視線をそらし、手で髪の毛をクシャっと掻いた


『……』


本当に珍しく落ち着きがなく、気まずそうな様子の陽生


そんな陽生に正直驚きつつも、無意識に体の力が少し抜けていくのを感じた



なんだそんなこと?


自分が椎名グループの跡取りだということを、そんなにも知られたくないの…?



何かすごく複雑そうな雰囲気だったから、何言われるのかと思ったら


何?そんなこと?


私は改めて肩の力を抜く、と口を開いた



『別にどうも思わないけど?』


『…え?』



私の言葉に視線を戻した陽生を、すかさず真っ直ぐ見つめた


『まぁ、私も初めて聞いた時はさすがに少し驚いたりはしたけど…
でもそれが何?

だからって陽生は陽生でしょ?別にどうこう思うことでもないと思うけど?』


『……』


いくら金持ちで有名な資産家の息子だろうが、私にとっては別にそんなの興味ないし、どうでもいい


それに初めて会った時から何となくそうなんじゃないかと薄々思ってたから、そこまで驚くことも無かった


だから何で陽生がこんなこと聞いてくるのか、正直分からないぐらいだ


変わらず陽生の考えてることが、今ひとつつかめない