『今…なんて?』
一瞬、ほんの一瞬だけど、私のその質問を聞いたとたん、陽生の声のトーンが何故か低くなった気がした
そんな陽生に少し違和感を覚えつつも、あえて気にすることなく私はずっと疑問に思ってたことをぶつけた
『え?だから、どうして陽生はお父さん仕事を継がなかったのかと思って…』
実は陽生が椎名グループの息子だって言うのを耳にしてから、ずっと気になってた
どうしてここのホテル…いや、親の後を継がなかったのかなって…
だって、息子の陽生が父親の後を継ぐのって普通っていうか、よくある話しでしょ?
なのに…ね?
まあ…かと言って、医者も負けず劣らず立派な職業だとは思うけどさ…
『て、あれ?陽生?』
そんな事を思いながら、さっきから一向にしゃべらない陽生に不思議に思い
思わず顔を上げたその時、陽生が突然ベッドから起き上った
『わっ!?』
その衝撃で陽生の腕から頭がずり落ちた私は、驚いて間抜けな声を出してしまった
『ちょ、ちょっと何?いきなり起き上がらないで……』
起き上がらないでよ!と口に出そうとしたその言葉は、陽生の言葉によって途中で遮られてしまった
『果歩お前…知ってたのか…』
『えっ』
陽生の言葉につられるように、私も体を少し起こした



