甘い体温


『そんなに大変なの?』

『あ~まあな、忙しいは忙しいんだけど、明日はちょっと仕事終わってから人と約束があって…』


『…約束?』


『ああ、そんなに遅くはならないとは思うから心配するな』


『仕事関係の人?』


『…まあ、そんなとこだな』


『ふ~ん、そっか、陽生もいろいろ大変なんだね』


それはそうだよね、陽生にだって付き合いの1つや2つ、あって当たり前だよね


きっと、いろんな付き合いがあるんだろうな…


私にはめんどくさくて、到底無理な話しだけど


『楽しい?』


『えっ』


『仕事…楽しい?』


私の突然の言葉に、陽生は少し驚いた顔を向けた


『…何だよ急に?』


『ん~、何となく聞いてみたくて』


『はは、なんだよそれ?でもまあ……う~ん、そうだなぁ…楽しいって言われれば楽しいかもな』


『…なによそれ?なんか曖昧だね…』


陽生のことだからもっと、はっきりとした言葉が返ってくると思ってたんだけど…なんか以外


『まぁでも。なんだかんだ言って医者になって良かったとは思ってる…かな』


『…良かった?』


『ああ、患者さんの笑顔見てると、逆にこっちも救われる時がある』


『え?』


『逆にこっちがいろんなことを教えてもらったり気付かせてもらってるよ』


『……』


そう言った陽生の顔がすごく嬉しそうで、生き生きとしてて、何となくその次の言葉が出てこなくなってしまった


陽生ってこんな顔もするんだ…


新たな発見に、心がどこか嬉しくなるのを感じた


なんか、こういう顔も好きかも


はぁ…こんなこと思うなんて本当に重症なのかもしれない…私


そんな事を思っていた時、私の頭の中でふと、ずっと気になっていたことが頭を過ぎ、陽生に視線を向けた


『ふ~ん知らなかった、そんなに医者っていいもんなんだ~』


『…まあな』


『じゃあここのホテルを継ぐよりも?』


『えっ』