甘い体温


『ん、なに?』


『寒くないか?』


私と目が合うなり、陽生は優しい眼差しで私の体をぐいっと引き寄せた


『…うん』


抱き寄せられた私は、陽生の胸に顔を預けながら小さく頷く


陽生はそんな私を腕枕しながら、優しくあやす様に私の頭を撫でる


それがあまりに気持ち良くて再び穏やかな眠気が私を襲う




温かい


最近この瞬間がたまらなく好き


静かな部屋で、陽生に抱きしめられながら眠るこの瞬間がたまらなく心地いい


一定のリズムを刻む陽生の鼓動を聞いてると、優しい安心感に包まれてすごく穏やかな気持ちになれる


この時だけは嫌な事を全て忘れさせてくれる


このままずっとこうしていたいな…


なんて柄にもなく思ってしまうほど…



『果歩?』



耳元で陽生に呼ばれ、再び遠のく意識が引き戻された


『…ん?』


私の頭を撫でる陽生の手が止まったのに気づいて、不意に私は顔を上げた


『悪い…』


『ん?』


何故か少し申し訳なさそうな表情で私を見つめる陽生に、寝ながら首を傾けた


『悪い、明日も帰り遅くなると思う…』


『…帰り?』


『ああ…たぶん今日よりも遅くなると思う』


『…うん』


『なるべく早く帰るつもりではいるけど、何時に帰れるか分かんねーから明日は先に寝てていいぞ』


『…そっか、分かった』


私は陽生から視線を逸らすと、再び陽生の胸に顔をくっ付けた