『ばか陽生…』
唇が開放されるやいなや、私は陽生に悔し紛れに呟いていた
そんな私をふっと笑う陽生
その、陽生の笑顔につられるように、私も少し顔を緩めると、陽生の首に腕を回し、自分の元へ引き寄せた
そして陽生の耳元に唇を近づけると、意地悪くもう一度囁いた
『…寒い』
その瞬間、「了解」と、陽生の笑いがまじった優しい返事と共に、私の体はぐいっと陽生の腕に持ち上げられて
『じゃあ今から風邪ひかないように俺が責任もって温めてやるよ』
そう耳元で低く囁いた陽生に、これでもかってぐらいにドキドキさせられてしまった
『…ばか…』
ベッドルームに向かう途中
陽生に抱きかかえられたまま何度もキスされた私はもう
頭の片隅に、抵抗の「て」の字も、残ってはいなかった
『果歩?』
現実の世界から意識がと遠のきそうになろうとしたその時、陽生の声で再び意識が呼び戻された
『悪い…起こしたか?』
『…ん?』
その声に陽生の腕の中から顔だけを少し上にあげる
すると、薄暗い照明がついた部屋の中で、私と同じく裸でベッドに横たわる陽生と目が合った



