『ねぇ、やっ…ちょっと…』
私は近づいてくる陽生を必死に押し返しながら、ズルズルと後ずさりする
けれど、元々ソファーの隅の方に座っていた私は、すぐに行き場をなくした
『なんだよ、何で逃げんだよ』
『…だ…だって…』
『だって何?』
『さ、最近その、し、しすぎじゃない?』
『だから…何?』
『え”?何って…だから、その…
今日は疲れてるみたいだし、ゆっくりしたほうが…』
『却下』
『う”…でも…』
『今更なんだよ…やけに今日は消極的なんだな…
どうした?この前はあんなに積極的だったのに?』
『え、う…それは…』
意地悪く問いかけられた陽生の言葉に、一気に顔が熱くなり、私は思わず陽生から視線を逸らした
そ、その事に関してはあえて触れないでいただきたい…
あの時の事を思い出すと、恥ずかしさでどうにかなりそうなんだから
それでなくても今のこの状況に、やばいぐらい気持ちが高ぶってるっていうのに…
追い詰められた私は抵抗の意味を込めて、ほんの少し体を起こした
そんな私の態度に、陽生はさっきよりもあからさまに眉間に深く皺を寄せた
『果歩?』
『いや…あの…』
私を見つめる陽生の目が鋭く光って見えて、思わず気持ちが怯む
まるで狙った動物を絶対に逃がさないと、追い込む野獣のように
すると次の瞬間、陽生の手が伸びてきて、私の頬にそっと触れた
『嫌か?』
『えっ』
『そんなに俺が嫌?』
『……』
その言葉にビクンと体が反応して、思わず私は顔を上げた
ドクンッ
その声に、すぐ目の前の陽生の真っ直ぐな瞳に捕らわれて、大きく心臓が波打った
ず、ずるい
卑怯だよ
そんな甘えるような表情で
しかも上目使いでそんなこと言われたら、これ以上拒否出来なくなる
それに陽生だって、私が本気で嫌がってるとはきっと思ってない
それを分かっててわざとやってる



