甘い体温


陽生はそんな私を最後にもう一度ポンと叩くと、私から手を離しソファーの背もたれに体を深く倒した


ふ〜っと体の力を抜くような陽生のため息が耳に入り、私は、思わず陽生の方へ視線を戻した


気づくとそこには、体を沈めるようにソファーに深く待たれて、目を瞑る陽生の姿があって


すごく疲れてる様子だった


こんな姿の陽生を見るのは、珍しい


今まで仕事から帰ってきても、疲れたとか、そんな陽生の素振りを今まで見たこともないし、愚痴を聞いた事も無い


でも、やっぱり本当は口には出さないだけで、相当疲れてるのかもしれない


それもそうだよね


正月休みが明けてからずっと帰りが遅い


連休明けは特に忙しくなるって前に陽生も言ってたっけ


遅い時には11時を過ぎることもあるぐらいだし


大変なんだろうな…


学生の私にはまだその辛さは分からないけれど…



『大丈夫?』



気づいたら私は、そんな陽生に向かって声をかけていた


『え?』


私の声に気づいた陽生が、不意に目を開けた


『すごく疲れた顔してる…
私の心配するよりも、陽生の方こそもっと自分の体調管理しっかりしたほうがいいんじゃないの?』


『え…ああ』


私の視線に気づいた陽生と目が合った


『またこの前みたいに倒れたら、もともこうもない訳だし、あんまり無理しないでよ』


『……』


そこまで言うと私はまた陽生から視線を逸らし、何となく自分の足元に目を向けた


て、あれ?


急になんでこんな事口ばしっちゃってるんだろう、私…


勝手に言葉が出てきたとはいえ、こんな言葉が自分の口から出てくるなんて、信じられない


一気に恥ずかしさがこみ上げてくる


私の言葉じゃないみたい


すると、隣から私をじっと見つめる陽生の視線を不意に感じて、思わず顔を上げた