『ふ~ん、そっか、椎名先生さすがだね』
しばらく私の様子を黙って見ていた後藤が、すべてを悟ったかのように微笑を私に向けた
何故か一人納得したように、後藤は感心していて
そして「いいなあ~」と呟きながら、私と同様、ソファーに深く体を倒した
そんな後藤を横目に、私は恥ずかしくなって俯きながら、もう一度胸元にあるネックレスを、そっと指でなぞった
手に感じる小さな形を改めて実感すると、この前の出来事は夢じゃなかったんだと、改めて信じさせてくれる
まさかこんなふうに貰えるなんて、これっぽっちも思ってなかったから、やっぱり嬉しいかも
毎年直輝から、ケーキとかさりげなくもらってはいて、それはそれで私なりに嬉しかったし、そのことで少し救われていたところもあった
だけど、でも
やっぱりそれとは違う
それとは比べ物にならない、また違う嬉しさが私の中に広がって充満してるのが分かる
本当に不思議なほど…
『あ、そういえば椎名先生にちゃんとネクタイ渡した?』
『え?』
ソファーに体を深く預けてた後藤が、何か思い出したかの様に私に問いかけ、再び私に視線を向けた
『この前買ったネクタイだよ…ちゃんと渡せれた?』
心配そうに首を傾げる後藤に、私は小さく頷く
ネックレスに気づいた後、私もすぐに思い出して、陽生に恥ずかしながらも一応渡したんだった
『椎名先生、喜んでくれた?』
後藤のその問いかけにも、私は小さく頷く
陽生もまさか私から貰えるなんて思ってなかったみたいで、最初こそ驚いてたものの、すぐに喜んで受け取ってくれた
面と向かって誰かにプレゼントを渡したのなんて、生まれて初めてだったから、少し不安だったけど、陽生の嬉しそうな笑顔を見たら、そんな不安はすぐに消えてなくなってしまった
案外私も単純なんだと、自分で呆れたりしつつも
今日もまた私があげたネクタイをして仕事に向かう陽生を見たら、顔が自然にほころんでしまっていた



