甘い体温


『ねえ…それって、椎名先生からのプレゼント?』


『え?』


その言葉に不意に前を見ると、彼女は私の首元を興味津々に見つめていた


『…あ〜…これ?』


後藤の視線に気づいた私は、思わず首に付けているネックレスを隠すように指で触れた


『それって椎名先生から?』


そんな私の指元を見つめながら再度聞いてくる後藤に、私は何となく照れくさくて「あ〜…」と曖昧な返事を返すしか出来なかった


私の胸元にはホワイトゴールドのハート型のチャームがついたネックレスが、さりげなく光っていて…


確かに陽生が、この前の誕生日に私にくれたものだった


誕生日の次の日、朝起きて気づいた時にはもう私の首元に着けられていて、ビックリした


しかもよく見ると、チャームの金具部分には有名なブランドのロゴが刻印されていて、けっして簡単に買えるような金額のものではないことが、一目で見て明らかだった


驚いた私は陽生に慌てて「こんな高いもの貰えない」、と返そうとしたんだけれど、陽生はなんでもないような顔で


「貰えるもんは素直に貰っとけ」


ってそう一言だけいって笑うだけで、それ以上私に取り合ってくれようとしなかった


だから、戸惑いながらも素直に受け取ることにした


ていうか、そうせざるをえなかったって言ったほうがいいのか


ちなみにこれは後から聞いた話なんだけど、私がたまたま陽生と静香さんを町中で見かけたあの日


つまり私が勝手に二人の関係を誤解したあの時


あの時2人が一緒にいたのは、私の誕生日プレゼントを一緒に探してくれてたからで


陽生が静香さんに頼んだらしい


これはつい最近、静香さんに会った時に、彼女が私に内緒で教えてくれたこと


それを聞いた瞬間、あの時のことが全部私の為のものだったんだと思い知った私は


そんな陽生の行動に、嬉しいような申し訳ないような、複雑な思いに襲われて、柄にもなく泣きそうになってしまった


胸がぎゅっと締め付けられて


それだけで、私の体が温かくなるのを感じたのを覚えてる