「今日少し帰り遅くなるから、先にご飯食べてていいぞ」


「分かった、頑張って」


陽生から送られてきたメールに、私はピッとボタンを押して、メールを送信した


そっか、今日も遅くなるのか…


私は肩の力を抜きながら、携帯を閉じた


『どうしたの~?そんな顔して…何かあった?』


携帯をポケットにしまおうとしたとたん、突然隣から可愛らしい声をかけられた


『三月さん?』


そんな声にふと隣を見ると、後藤のクリクリの瞳が私をじっと見つめていた


『ううん、別に』


私はそんな後藤に一瞬目を合わせると、すぐに逸らす


『椎名先生とうまくいってないの?』


けれど、やたら感のいい後藤は、すかさずそんな私に核心をついてくる


あまりの感の良さに時々エスパーなんじゃないかと思うほどだ…


そんな後藤を横目に、私は少し苦笑いを浮かべた


『いや…そんなんじゃないよ』


私は綺麗に並べられている目の前の本棚を眺めながら、ポツリと口を開いた


『本当?』


『…うん』


本当にそんなんじゃない


むしろその逆で、陽生とはうまくいってる


相変わらず陽生は優しすぎるってぐらい優しいし、私のことを大事に扱ってくれる


それが身にしみて伝わってくる


…なんだけど……



早いもので、神戸から帰って来て、気づけば2週間が過ぎた


私が陽生への気持ちに気づいてから2週間が経とうとしていた