甘い体温


ガタっ”と言う音が聞えて、私は目をあけた


何故か私はカーペットの上に横たわっていて、背中越しにはソファーの感触


体には、私を包むように、毛布がかけられていた


そんな状況を見て私はいつの間にか、陽生の戻りを待ちながら寝てしまったことにすぐに気づく


私は重たい体を少しだけゆっくり起こして、音がした方へ視線を向けた


そこにはいつの間にか帰ってきた陽生の姿があって、


私と同じく少し離れた窓際に座り、片方の肘を膝に立てながら、ビール片手に窓の外を眺めていた


陽生は私が起きた気配に気がつくことなく、ずっと窓の外を眺めている


私はそんな陽生を見て



『陽生』



と、声をかけようとして、その言葉を発することなく呑み込んだ


言葉にならなかった、と言った方が正しいのかもしれない


声にしたくても、陽生の表情を見たら声になんかならなかった


『……』


何て…顔をしてるの?


私は思わず、その表情に息を呑んだ


窓の外を見つめる陽生の横顔が、あまりに寂しそうで、切なそうで儚げで…


今にも消えてしまうんじゃないかと思った


こんな寂しそうな陽生を見るのは初めてで、見てるこっちまで切なさがこみ上げてくる



…これは夢?



正直、起きたばっかりで、頭がうまく働いてないのも確か


これが現実なのか夢なのか、何とも言えない夢心地の感覚の中で


私は陽生の姿を無言で見つめていた