甘い体温


それから私達は神戸の海を十分に満喫すると、今晩泊まるホテルへと向かった


さすが大晦日だけあって、フロントでは大勢の宿泊客が行きかっている


ぎやかで、どこかみんな楽しそうに見えた


それにちょっとしたカウントダウンのイベンがホテルの外で行われるみたいで、みんなぞろぞろと外に出て行く姿が目について見ていたら、少し笑みがこぼれた


そんな私の様子を見て陽生が「俺達も行くか?」と言ってくれたけれど、さすがに今日は朝からバタバタで


疲れ果てていたので「大丈夫」と言って遠慮しておいた





そして、部屋に戻ってひと息つこうとしたその時、突然鳴った陽生の携帯


『ごめん、すぐ戻る』


一言そう言い残し、隣のベッドルームへと慌ただしく姿を消してしまった陽生


一人取り残された私は、少し疲れた足取りで窓の傍に歩み寄った


窓からの景色を眺め、思わず目を細める


『……』


どうやらここも、私の見た限りスイートルームだと思う


それに、何となく部屋の造りが今までのホテルの造りと似てて、すぐに馴染むことができそうだ


ほっと肩の力を抜きながらも、私は少し苦笑いを浮かべていた


陽生の気持ちは嬉しいけど、別にここまでしてくれなくてもいいのに


何も毎回スイートルームじゃなくても、普通の部屋でも十分いいんだけど…


やっぱり金持ちの感覚にはついていけないと改めて思いながら、窓際に敷かれているカーペットの上に座り、小さいため息を吐いた


まさか、こんなに穏やかな気持ちで自分の誕生日を迎える日がくるなんて、思わなかった


去年の私には、これっぽっちも想像出来なかった


なんか不思議…


今までの事を思い浮かべながら、今ここにいる自分は夢の中の自分なんじゃないかと思えてしまう


去年の私と今の私の状況の差があまりにも激しすぎる


初めて過ごす、一人ぼっちじゃない自分の誕生日


誰かと迎える新しい年明けの瞬間



――…後、1時間ちょっとで今年も終わる