甘い体温


一度ホテルに戻った私達は、日が暮れるまで少し体を休めて


次に陽生に連れて来られた場所は、もう私の予想を超えていた



『…陽生…あの、世界一周でも行くつもり?』


『は?』


私は歩みを止めると、思わず陽生の腕を引っ張った


それに気づいた陽生も足を止める


『これに乗ってイタリアまで行くの?』


『は?……イタリア?』


不安そうに見つめる私を見て、何故かポカンと口をあけた陽生


けれどそんな私の頭の中をすぐに読み取ったのか、突然陽生は可笑しそうに笑い出した


『え?ちょっと、陽生?!』


突然笑い出した陽生に、今度はこっちがポカンとしてしまう


私、何か変なこと言った?


そう思いながら、納得がいかないままに陽生を見ていたら


『果歩、お前それ、本気で言ってる?』


『え?』


『それともわざと?』


笑いをこらえながら私の顔を覗き込んでくる陽生に、思わず顔を歪めた


『はは、心配するな、さすがにこの船じゃあ、日本からは出れねーよ』


そう言うと、陽生は私の頭にポンポン触れた


『な!?』


『ご期待に添えれなくて悪かったな』


「今度はご期待通りイタリアにでも行くか」と、笑いながら言う陽生に、思いっきり不機嫌な顔を向けた


…これって私…バカにされてる?


思わずムッとする私


だって、しょうがないじゃない、


こんなもの、生まれて初めて間近で見たんだもん


私はもう一度確認するように顔を上げて、目の前の物体を見上げた