甘い体温



『じゃあまたな』


『ああ…』


『今度休みがとれた時でもまたお前んち寄るわ』


見送りに店の外まで来てくれた亮が、陽生に言った


『果歩ちゃんもまたね♪』


と笑顔を私に振りまく亮に、一応お礼の意味を込めて「ごちそうさま…」と言っておいた


『今度俺がそっちに帰った時は、デートでもしようね』


懲りずにそう付け加えてきた亮に、私はもう何も応えなかった


隣の陽生も、そんな亮に呆れたようにため息を吐くだけだった


そんな時、突然陽生のケータイが鳴って「悪い」と手で合図しながら陽生は私達から離れてしまい


残された私と亮


だけどそれを見計らったように、亮は突然私に視線を向けて歩み寄ってきて


そんな亮に思わず警戒して、体がすくませながら視線を向けると…



『陽生のこと頼むな』


『え?』


予想外な言葉が聞こえて、私は思わず間抜けな声を出してしまった


『あいつ、ああ見えて人一倍寂しがりやだからさ』


『え?…陽生がですか?』


少し驚きながら声を出した私に、亮は優しく頷いた


『何となくだけど、君と陽生は似てるよ』


『…え?』



私と陽生が似てる?


ありえない…と微妙な表情になった私に、亮は続けた


『君なら陽生をちゃんと分かってあげれると思う』


『え?ちゃんとって…えっ?』


ますます戸惑う私に、亮は初めて私に真面目な顔を向けて


『まあ、とにかくそういう事だからよろしく頼むな』


それだけ言うと、また顔を崩してそれ以上のことは何も言ってくれなかった


『……』


本当はもう少し、亮からちゃんと今の言葉の意味を聞きたいと思ったけれど、あまりに真剣な表情だったから、何も聞けなくなってしまった



『あ、それから…』