甘い体温


『はいはい、わーったよ!もう分かったから、負けた負けた、俺の負け

だからいちゃつくのは他所でやってくんない?

何が面白くてだちのラブシーンなんて見なきゃいけねーんだよ』


そう言うと、心底呆れたとでも言うように、苦笑いを浮かべた


『あっそ』


その言葉に満足そうに陽生は、私の体をそっと離した


……。


もう、恥ずかしすぎる…


ようやく開放された私は、思いっきり陽生を睨みつけた



ばか陽生


最悪…


そんなバカなやり取りをしながらも、私達は亮お勧めのお昼のコースランチを頼むと、やっとひと息ついた


ちなみにパスタは数種類から選ぶことができて、私は、もちろんカルボナーラ


陽生はコースの他に、軽いピザも頼んだ


注文を聞いた亮が私達の席から立とうとした、その時


不意に陽生が、亮に声をかけた


『おい亮、冗談抜きで美味しいもん食わせろよ』


『え?』


『お前の料理次第で、俺のこれからの人生が変わるんだよ』


『は?何だよそれ?』


『お前の腕次第で、俺は失恋するかもしれねーってことだよ』


それだけ言うと、陽生は一瞬亮を見た後、すぐにまた前を向いた


陽生の意味不明な言葉に首を傾げていた亮は、すぐに何かを悟ったのか、今度は企むような表情を向けてきた


『ふ~ん、じゃあご期待に応えて、とびっきり不味いもの食わせてやるよ』


『あ?』


再び亮の方を向いた陽生に満面の笑みを見せ、亮は楽しそうに厨房の方へ消えてった


そんな亮の後ろ姿を陽生は「ったく、覚えてろよ」とポツリ呟きながら眺めていて


私はそんな2人のやり取りにもう呆れて、苦笑いを浮かべるしかなかった



仲がいいんだか悪いんだか


もう勝手にやってれば…