甘い体温


『お待ちしておりました、椎名様』


『……』



ア然と立ちすくむ私の体を、何食わぬ顔をした陽生がグイッと引き寄せた


いつの間にか眠っていた私を起こした陽生は


「着いたぞ」と寝起きの私に軽くキスをすると、有無を言わせず私を車から降ろした


いったいここが、どこなのかも分からずに


わけが分からないまま陽生に手を引かれ、連れて来られた場所に目を見開いた


目の前には40歳後半ぐらいの、ビシッとスーツを着こなしたダンディーなおじさんの姿


建物に入るなり、そのおじさんが私達を出迎えてきて


その後ろにも数人、ホテルのスタッフらしい人たちが、出迎えてくれた


周りを見渡せば、だだっ広いロビー


今私がお世話になってるホテルもすごいけど、ここも負けず劣らず一流のホテルだと思う


そんな状況に私は動揺を隠せなくて、相変わらず回りをキョロキョロ見渡すばかり


ただ、どうやら見る限り、ここはイタリアではなさそうで……


内心、それだけはほっとした


第一、よく考えれば、パスポートなんて私、持ってないしね



それにしても…ここはどこ?



私はたまらず、隣でダンディーなおじさんと話す陽生の服を引っ張った



『ん?どうした?』



そんな私に気づいた陽生が私の方に視線を向けたので、すかさず陽生に手招きすると、顔を近づけてきた陽生の耳元で問いかけた



『ここ、どこ?』


『ん?ああ、俺達が今日から泊まる所』