甘い体温


『ねぇ…本当にどこ行くつもり?』


私は助手席側から、運転する陽生に問いかけた


無事に身支度を終えた私は今、走行中の陽生の車の中


もう気づけば、出発してから余裕で2時間は超えている、


さっき料金所らしき所を通ったから…今、高速道路を走ってるんだという事は、私の頭でも何となく理解しているんだけれど…


陽生の様子を見るかぎり、まだ全然目的地に着く気配はないし…


さっぱり検討も付かない行き先に、私はとうとう痺れをきらしていた


『ん?どこって、パスタ食べに行くつもりだけど?』


だけどそんな私の問いかけに、陽生はさらっと一言、そう告げるだけ


『……』


それはさっきも聞いたんだけど…


私は清々しい顔して運転する陽生に向かって、思わず顔をしかめた


するとそんな私の気配に気づいた陽生が、片方の手でそっと私の頬を撫でる


『どうした?気分でも悪い?』


そう言って陽生は一瞬私の方を向くと、また前に向き直る


『ねえ?今どこに向かってるわけ?』


これでこの質問をするのは、今日だけで3回目だ


私は久しぶりに見るメガネ姿の陽生の横顔を、再びじっと見つめた


仕事以外でメガネをかけている陽生の姿は、珍しい


陽生いわく、車で遠出をする時はコンタクトではなくメガネにするらしい


不覚にも、いつもと違う陽生の横顔に…雰囲気に、なんとなくドキっとしてる私がいて


陽生がやたら色っぽく見えるのは、このメガネのせいなのか


それとも私の気のせい?