陽生は私の顎を指で持ち上げると、強引に顔を上に向かせた
『もう、一人じゃないだろ?』
『えっ』
『俺が傍にいる、だから果歩は一人じゃない、何度も言ってるだろ?』
そう言って、陽生は真っ直ぐ私を見つめ
『俺が今までで最高の誕生日にしてやるよ』
優しく私の顔を撫でながら、愛しそうに陽生は目を細めた
『生まれてきて良かったって思えるようにな』
『えっ…』
『俺がお前に生まれてきてありがとうって、ちゃんと伝えたい』
『はる……』
『俺の口からちゃんと伝えたい』
そう言うと陽生は顔を近づけて私の唇を優しく塞いだ
柔らかい感触が私の唇を包み込む
そして触れるだけのキスを終えると、陽生は何も言わず私に優しく頷いた
『……』
そんな陽生に私は何も言えず、ただただ見つめることしか出来なくて…
なんで
なんで陽生には私の考えてる事が分かっちゃうんだろう
それだけじゃない
それと同時に私の本当に欲しい言葉をいつもくれる
ジグソーパズルのピースをはめ込むみたいに、私の空っぽの心を優しく埋めてくれる
誰もくれなかった心地いい言葉を、さらっと当たり前のように与えてくれる
…どうして?
不安で波立つ心を、陽生はいとも簡単に穏やかにしてくれる



