甘い体温


『ベッドルームどっち?』


『えっ』


突然声をかけられた私は、ビックリした声をあげた



『ちょっとあなたもこっち来て手伝って』



そう言うと、スーツ女はそんな私に構わず目で合図してくる


『え?』


『いいから早くこっち来て!』


『え、あ……はい』


訳が分からずも彼女の迫力に負けた私は急かされながら歩み寄った


「あなたはこっち支えて」と支持をされ、私は女の反対側の陽生の肩を支えると、ベッドルームまで案内した


部屋まで行く途中、不意に女のほうへチラッと視線を移すと、まさに綺麗と言う言葉がピッタリな顔立ちで


甘すぎずさっぱりとした大人の匂いが私の鼻をかすめた







『えっ?39度の熱?』


私はベッドに陽生を寝かせると、目の前のスーツ女に聞き返した


『そ、ちょっと頑張りすぎちゃったみたいね』


陽生の手首に手を添えて、脈を計りながら私に答える


慣れた手付きといい、その行動からして、女は陽生と同じ医者だとすぐに分かった



『まあ、仕事上患者からうつされることは珍しくはないからね
医者だって人間だから』


『医者の不養生?』


『まあ、そんなとこね』


ポツリ呟いた私に、女は苦笑いを浮かべた


『ったく…あれだけいつも自分の体の管理はきちんとしとけって言ってるのに』


女は呆れたように言うと、陽生の手を離した


『あ~…悪いな静香……』


少し苦しそうな表情で、女の名前をかすれた声で呼んだ陽生に


「本当にいい迷惑」と、スーツ女は嫌味を言っていた