『…っ……』


ぎゅっと力強く、だけど優しく私を抱きしめる陽生


それがあまりにも心地よくて


気づいた時には私もそれに応えるように陽生の首元に腕を回していた


もう自分でも無意識に


我を忘れて陽生の首に腕を回してギュッと腕に力を入れる


陽生もそれに応えてくれるように私の体を強く抱き返してくれる



『果歩……もっと肩の力抜けよ
その歳でこんなに肩肘張って生きててどうすんだよ

今からそんなガチガチに生きてたらこの先絶対もたねーぞ、もっと楽に生きろよ

もっと気楽でいいんだよ』



陽生の手が優しく私の背中を撫でる


陽生の心地いい声が私を優しく包むから


もう私の涙は壊れたように溢れ出す


そしてその瞬間、私の中で何かが、弾け飛んだ







もう、いい…


もういいよ


もう負けた


悔しいけどやっぱり陽生には敵わないや


もうごちゃごちゃ考えるのはやめた


あんたが私を必要としてくれるなら私もあんたを受け入れる


ちゃんと私も陽生と向き合うから


だから


あんたのこと信じてみてもいいよ


ううん、信じてみようと思う



でも


それでも…



『少しでも裏切ったらあんたなんかすぐに捨ててやるからね』



その時はすぐに振ってやるんだから



『はは、望むところだな』



そう言うと陽生は私の顔を下から覗き込み、自信満々にニヤッと口の端を上げた


その顔はいつにもまして自信に充ち溢れた表情で…



『果歩』


『……』




『改めて今からよろしくな』




そう言って満面の笑みを浮かべた陽生に、私も少しだけ笑みを零していた