甘い体温


『…でも…』


いきなりそんなこと言われても


確かに陽生の言葉はすごく心に響く


だけど、そんな単純なことでいいのだろうか?


自分の考え方一つで変わるものなの?


陽生の言葉に思わず私が戸惑いながら顔を歪めたら


『かほ…』


そんな私の表情を見て、陽生は何かを感じとったのか、真剣な面持ちで口を開いた




『だったら俺の為に生きろよ』



『えっ』


『それでも果歩の中から不安が消えないっていうなら、俺の為に生きろ』



えっ…



陽生の言葉に目を見開く



『俺もお前の為に生きるから、俺がお前の苦しみを半分背負ってやるよ』


『…なに言って……』


『果歩…俺と一緒に生きる意味探してみようか?』



陽生は両手で私の顔を優しく挟み、穏やかな表情を私に向ける


その顔は、今まで見たことがないぐらい穏やかで、優しさに溢れていて


思わず目を奪われる


一気に鼓動が早くなり、体の温度がさらに上昇するのを感じた


だけど、それと同時に頭が真っ白になって


陽生の視線に耐え切れなくなった私はとっさに陽生から目を逸らした





何?


ちょっと待って


なんなのこの展開は?


突然の陽生の言葉に理解できない、頭がついてかない


心の中がありえない速さでざわつき立てる




――私が陽生の為に生きる?