甘い体温


『う…ん』


そんな時、果歩の苦しそうなうめき声に気づいた俺は、いつものように果歩の体を起こさないようにそっと引き寄せた


果歩の頭を俺の胸に抱きとめて、あやすように頭を撫でる


苦しそうに顔を歪ませる果歩


寝てる時、必ず一度は息苦しそうにこんな表情を見せる


酷い時には苦しみに耐え切れないのか、泣いてる時もある


人は寝てる時、無意識に過去の記憶が甦ったりしたりすることがあったりする


その思い出が深ければ深いものほど無意識に出てきたりする


たぶん果歩自身も気づいてないんだろう


果歩が背負ってるキズは自分でも測り知れないほど深いものなんだと思う


俺はそんな彼女をほっとけなくて、思わず手を差し伸べる


それは別に俺が医者だからと、使命にかられてる訳でも果歩に同情してる訳でもない


好きな女の苦しんでる姿は見たくない…ただそれだけ


俺が、一人の男として彼女を救ってやりたい


幸せにしてやりたい、ただそれだけの思いが俺を突き動かす


そっと抱きしめ、頭や背中を撫でてやると、無意識にすがるように果歩は俺にしがみついてくる


不謹慎だけど、その行動さえ俺は愛しく思えてしまう


何があっても俺が守ってやりたいと心から思う瞬間だったりする


たぶん…果歩は親からの愛情をちゃんと受けてない


これは俺の憶測にしか過ぎないけれど、これは今まで果歩を見てきて思ったことだった


だから人に甘えることを知らない


愛し方を知らない


自分の感情をうまく外に出せないんだと思う