甘い体温


(思い―Side陽生―)



『寝た…か』


俺はそっと顔にかかる長い髪の毛を手ですくうと果歩の寝顔を覗き込んだ


ベッドに横たわり、俺に抱きついたまま寝息を立ててる果歩


泣き疲れたのか気がつくと果歩は俺の腕の中で気持ちよさそうに眠っていた


俺の腕の中で安心したように眠る彼女


あどけない寝顔


そんな果歩の寝顔を見ながら自然と顔が綻んでくる


こういうのを愛おしいと言うんだろうか?


今まで隣で眠る女の顔を、愛おしいと思ったことなんて一度もない


だいたい一つのベッドでくっ付いて寝ることすらもあんまり好まなかったぐらいだから


そんな俺が今じゃ、このありさま


人間変わる時は簡単に変わるもんなんだなと改めて思う


そんな自分自身に苦笑いを浮かべる



はまってんな…俺



俺は体を少し起こし果歩の頬に触れると涙で滲んだ目元をそっと拭った


正直、この歳になってこんな思いをするなんて思ってもいなかった


今までこんなに女の気持ちが知りたいなんて思ったことはない


一人の女相手に一生懸命になったことも、


本気で誰かを欲しいと思った事も無い


どうしたら彼女が俺のことをちゃんと見てくれるのか


どうやったら彼女の中に俺が入りこめるのか


気づくと毎日頭の中でそんな事を考えてる始末


今年29になるいい歳した大人が17の女に本気で片思い中って…


…これってどうよ


自分自身呆れつつも、初めてする片思いに新鮮で意外と楽しんでたりして


…ほんと、どうしようもねーな俺