甘い体温


もう嫌いだなんてこれっぽっちも思ってない


『だから…もうそんな寂しそうな顔しないで』


『えっ』



陽生のそんな顔なんか見たくない


なぜだか見てるとこっちまで辛くなる


それがどうしてかは分からないけれど


でも、これが今の私の素直な気持ちだから



『ごめん…今はまだそれしか言えな……』



その瞬間、陽生は私の言葉を遮るように突然私を強く抱きしめた



『もういい…もういいから』


『えっ』


『果歩の気持ちはもう分かったから、ちゃんと伝わったから
だからもう誤るな…何も言わなくていい』


『…はる』


『今はその言葉だけで俺は十分だから、サンキューな…果歩』



そう言うとさらに陽生は私を抱きすくめる


その腕の力強さに、またこらえきれなくなった私の瞳からは、再び大粒の涙が溢れだす



『かほ…しばらくこのまま抱きしめててもいい?てか、今は離したくない』


『……』


その言葉に私は素直に頷く


返事の変わりに陽生の体を抱きしめ返していた


不思議と今は私も陽生の体温にこのまま包まれていたかった


離れたくないと思った


あまりに陽生の体温が温かくて、気持ちよかったから…


そして、お互い何も言わず、ただお互いの体温を感じるようにしばらく抱き締め合っていた