ギュッと抱きすくめられて私の肩に男の額の重みが加わる


思わず私の口から溜息が漏れた


『無理』


一言そう冷たく告げると、胸の辺りに絡みついている腕を引き剥がした


『三月…』


拒否られた事が面白くないのか、さっきより低めの声が耳元で嘆かれる


けれど私は気にする事無くスカートを手に掴むと、それを履こうと立ち上がり、男と距離をとった



『ブラウンがお腹すかせて待ってるから』


『は?…ブラウン?』


私の言葉にさっきの低い声とは打って変わり、間抜けな声を出す男



『ブラウンって誰だよ…外人?』



その問いかけにスカートのジッパーを上げ終え、男のほうに体を向けると、今度は眉間に皺を寄せて私を見上げていた



『人種は知らないけど、私のペット』


『は?ペット?』


『そっ』


『なんだよ…動物かよ…男かと思った…』



そう言うと男はほっとしたように私に笑顔を向ける



……忙しい男