甘い体温


『……』


ホテルのドアを開けようとして、カードを差し込む手をピタッと、止めた


ゆっくり手を下ろし、部屋の前でため息を吐きながら俯く私


『やっぱり帰ろうかな…』


ポツリ呟くものの、他に行くところなんてない


今まで住んでいたアパートもまだ修理は終わってないし、帰れない


あれからすぐにホテルに帰る気が起きなくて、適当に時間をつぶしてふらふらしてた


途中、数人の男に声をかけられたりして、いつもなら適当にご飯食べたりして合わせるんだけど、何故か今日はそんな気分にもなれなかった


そんなことをしながら気づけば


今時刻は夜の9時を過ぎたところ


ここまで来る途中、何度も陽生から着信やメールが入ってきたけれど、完全無視


正直、今は陽生と顔を合わせたくない気分だった


何故だか気持ちがずっともやもやして、気分が晴れない


何をしてても憂鬱で


さっきから無性にイライラしてしょうがない


今まで味わったことのない、何ともいえない感情が私の中で渦を巻き、自分で自分に腹が立つ


なんでこんな気持ちに襲われているのかさえ、さっぱり分からなくて


戸惑うばかり


たださっきからはっきり分かるのは、町で見た陽生とスーツ女の仲よさそうに歩く2人の姿が頭から離れないってことだけで…



…なんで?



どうしちゃったの私?