甘い体温


『思ってた通り三月さんってみんなが言うほど冷たい人じゃないね』


『え?』


図書室を出ようとした時、急に言葉をかけられて後ろを振り返った


『みんな三月さんの何を見て言ってるんだか…』


彼女は少し納得のいかなそうな顔をしながら、私を見る


『別にいいよ…言いたい奴らには勝手に言わせとけば』


そんなのいちいち気にしてたらきりがない


それに、私自身もみんなに愛想振りまいたりするのは好きじゃないからそう思われてもしょうがないと思ってる


『やっぱり三月さんは大人だね、かっこいい』


私を見つめながら何故か今度は納得した顔で頷きだす後藤


そんな彼女に私はただ苦笑いを浮かべるしかなくて


『なんか私、三月さんとはいい友達になれそうな気がする』


『は?』


目を輝かせて言う彼女に、私は少し後ずさりする


『ねぇ、またここに来ていい?』


私の手をガシット握った後藤が、クリクリの瞳をさらに大きくして、私を見る



『べ、別に好きにすれば…』



ここは私のものじゃないし、誰が出入りしようと自由


わざわざ私に許可とらなくても…


『本当!じゃあまたその時はよろしくね、三月さん』


私の言葉を聞いた瞬間、すごく安心した表情になった後藤は私の手をぶんぶん振った


『……』


『ちなみに、今日私デートなんだ〜今から気合入れて化粧しないと、

じゃあね三月さんまたね♪』


そう言って、後藤はニコニコしながら図書室を早々と出て行った