甘い体温


『それからはもう想像つくと思うけど、何回も病院のお世話になりっぱなし』


へへっと痛みをこらえながら笑う彼女に私は何も言う事が出来なかった


だって、彼女を見てると不意に自分と重なるところに気づき、あの時の気持ちが甦ってくる


なんとなく昔の自分を見てる感じがして、苦しくなった



「果歩が知らないだけで世の中には辛い思いをしてる奴らなんてその辺りに五萬といるんだよ」



それと同時に陽生に言われた言葉が不意に私の頭をよぎる



『でもね、それでも椎名先生は見捨てずに私のことをいつもちゃんと見てくれて

何度も何度も同じこと繰り返す私に、毎回嫌な顔一つせずに優しくしてくれて、笑いかけてくれるの』


『……』


『私もねそのうちにそんな事を繰り返す自分がだんだん嫌になってきて…前に進みたいって思うようになってきて、
それでね、そう思った私はある日先生に言ったの

どうしたら前に進める?どうしたらこれ以上自分を傷つけないように出来るって?』


彼女はそう言うと、真剣な面持ちで私を見つめ、思わず私も真っ直ぐ見つめ返した


『陽生…なんて言ったの?』


私の問いかけにフフっと笑顔を見せると、吹っ切れたように彼女は言った



『まずは自分自身を愛してあげなさいって』


『え?』


『自分の好きな所を1つでも2つでもいいから見つけて、自分をとことん好きになって愛しなさいだって
自分が変われば必然的に周りの人間の態度や環境は変わってくるからって…』


『……』


彼女の言葉に思わず私は息を呑む




…自分を愛する?