甘い体温


『…何なんだよあいつは』


呆気にとられたスーツ男はケータイをポケットにしまうと私に視線を移した



『いいのか…あの男』


『さぁ?いいんじゃない』



私はあっさりと答えた


最初っからどうでもいい男だし


私に関わりさえしなければ、あの男がどうなろうと私の知っちゃことじゃない



『それより、大丈夫か?』


『え…ああ、うん』



心配そうに近づいて来たスーツ男に私は頷いて答えた



なんか疲れたな…


気分も最悪だし


今日はもう自分の家へ帰ろう


そう思った私は



『あ、どうもね、それじゃあ…』



私はスーツ男に軽くお礼を言うと、この場から早く離れたくて背を向けて歩きだそうとした



『あ、ちょっと!』




だけど次の瞬間、突然捕まれた私の手



『えっ?』



と思った時にはグイっと引き寄せられて、私の体は再び男の方に向き直されていた