甘い体温



――…バタン!


車のドアが閉まると同時に運転席に乗り込んだ陽生が私を見た


『もう帰っていいって』


『…そっか』


『良かったな』


そう言うと陽生は私に笑顔を向けた




私は今、陽生の車の中


あれから陽生は疲れた私とブラウンを先に休むようにと車で待機させ、変わりに警察の人達と話をしてくれていた


そしてようやく今、一段落したらしい



『少しは落ち着いたか?』


『うん…』



陽生は私が寒くないようにと、車の暖房をずっとつけていてくれたから、車の中は心地いい温かさで充満していて体も気持ちもとてもリラックスできた


私の返事を聞くと、安心したようにハンドルに手をつき、ほっと肩を撫で下ろした陽生


けれど、そんな陽生を見て私はふと、ある事に気がついた



『陽生…その格好……』


『ん?ああ…はは、今更だな』



本当に今更なんだけど


陽生は白のシャツに淡い青色のネクタイをして、何故か白衣姿の格好だった


『ひょっとして……』


その姿に気づいたとたん、私はハッと我に返る


そういえばこの時間って…まだ仕事中のはず


まさか……



『病院から抜け出して来てくれたの?』


『ああ、途中で病院飛び出してきたから…白衣脱ぐの忘れてたみたいだな』



やっぱり



『わざわざ私の為に?』



大事な患者さんがいるのに?



……私なんかのために?