甘い体温



どれくらい経ったのだろうか


陽生と電話がきれた後、私はずっとトイレの隅に膝を抱えて震えていた


陽生と一体どんな風に会話をしていたのか、よく覚えてない


けれど電話をきる時に言ってくれた


「いいかそこから動くなよ!俺がすぐに助けに行くから!!」


の陽生の言葉だけははっきりと覚えていて


その言葉を聞いたとたん、少しだけだけど怖さが和らいだ気がして、まともに呼吸は出来るようになった


それに気づくともう、さっきまでの足音や物音は聞こえなくなっていて


部屋は何事もなかったかのように静まりかえっていた


だけどやっぱりまだいるかもしれない


まだ安心はできなくて、不安で震える自分の体を一生懸命なだめるように手で擦りながら、今か今かと陽生が来るのを待っていた



『はるき……』



不意に漏れる私の声


少しでも不安をかき消したくて弱々しく呟いたその時だった


――…ガチャガチャ


玄関から勢いよく扉を開ける音がして、陽生の私を呼ぶ声が聞えた




『果歩!大丈夫か!!』



…陽生……



『どこだ!どこにいる!?』



陽生の必死に私を呼ぶ声に、私はすぐさま陽生の名前を叫んだ



『は、陽生!』



早く来て!!


無我夢中で叫んだ私の声に、乱暴な音と共に、トイレのドア勢い良くこじ開けられた