甘い体温


『分かったらこの手放してくれな……』


『ざけんなよ……』


『え?』


『お前、マジふざけんなよ…』



男の突き刺すような視線にさすがの私も背筋が凍った



『さっきから聞いてれば調子にのりやがって…てめーいい加減にしろよ!!』


『……』


『男をあんまりなめんなよ』



男の殺気に気づき、この状況はさすがにやばいと思った


目がいっちゃってるし…


私はすかさず掴まれている腕を振り払い、男から離れようとした


けれど、そう思った時にはすでに遅く、逆に思いっきり強く腕を引っ張られた



『ちょ、なにす……』


『そんなに遊びたいんなら、俺が今からお前をめちゃくちゃに壊して遊んでやるよ』



男は私を引き寄せると、耳元で低く囁いた


そして口の端をあげてニヤッと笑い、強引に私の腕を引っ張り歩きだす



『ちょっ、放して……』



思いっきり抵抗してみるものの、余計力を入れられてびくともしない


当然女の力じゃ男の力には適うわけがない



『い、痛い!放してってば!!』



ズルズル男に引っ張られて、気づくと目の前には、ワンボックスタイプの黒い車が一台路駐してあった


男は鍵で車のロックを解除すると後ろのドアを開けた


その光景に私は初めて身の危険を感じ、最後の力を振り絞って抵抗した



『ちょ、まじで無理……』



なんで私がこんな男に拉致されなきゃいけないんだよ!