その瞬間、何かのたかが外れたみたいに私の気持ちが一気に溢れ出した
それと同時に、私の頬にもうずっと忘れかけてた生ぬるい雫が、次から次へと流れ落ちる
何年ぶりかのこの感覚
『…っきらい…あんたなんか…あんたなんか、大っ嫌い…』
声にならない声を出す私に陽生は
『…うん』
そう一言だけ返すだけで、もう、それ以上何も言うことは無なかった
止めどなく溢れてくる涙
こんな気持ちになったのはどれぐらいぶりだろう
もう何も言えなくて
私は幼い子供に返ったみたいに、陽生の胸にしがみ付いて自分の感情を流し続けた
こんなに優しく抱きしめられたのも初めてで、顔も、体も、手も、足も体の全てが燃えるように熱くてしょうがなかった
そんな私の震える体を、陽生はずっと何も言わず優しく撫でてくれていて
以外にも私の背中を撫でてくれる手が大きくて、気持ちよくて、心地よかった
こんなに人の体温って、落ちつくものだったっけ?
誰かの腕に包まれて落ち着くって思ったのも、初めてだった
こんなに穏やかな気分になったのも、生まれて初めてのことだった
陽生の私を撫でる手の動きと共に
ずっと重くてドロドロしてた私の気持ちが癒されるみたいにスッと、解けていく感じがした
どうしてか、この男の言葉は今まで私に向けられた軽い言葉なんかより、ずっと重みがあって、心に響く
最初っからこの男には、私のことなんか全部見透かされていたのかもしれない
悔しいけど、私なんかよりもこの男の方がずっと上手だ…
そして私の涙腺は、壊れたんじゃないかと思うほどそれからしばらく止まることは無かった



