甘い体温


『果歩…』


『……』


『俺が人の温もり教えてやるよ』


陽生は優しく優しく子供をあやすかのように、私の頭を撫でる


そんな陽生に、私の手はシャツを握る力を増して…



『俺が果歩にいろんな意味で人の温かさをゆっくり教えてやる』



……人の温もり…温かさ…?



その言葉に、私の鼓動がドクンと波打つ




そんなもの


私には要らない


必要ないの!


なのに


どうして?


どうしてこの男は私がもうずっと諦めて、自分から捨てたものをこんなに必死になって与えようとするの?


どんな思いで、私が今までずっと諦めてきたか…


どんな思いで、私が今まで生きてきたか……


それなのに


今までずっと私が誰にも触れさせなかった心のドアを、この男はいとも簡単に突き破って来る






ずるい


ずるいよ


こんなのずるい


こんなのってない


悔しいよ


悔しいけどもう


認めたくないけど



もう、限界かもしれない――…