甘い体温


陽生は私の体を少し自分から離すとそっと口を開いた



『人は一人じゃ生きられない。人は自分が望まなくても何だかのかたちで触れ合って助け合ったりしてるもんなんだよ

今まで果歩がどんな生活して生きてきたかは俺は知らない。それは俺が考えてる以上に辛くて孤独なものだったのかもしれない

だけど、今こうして果歩が居るのは何らかの形で誰かの支えがあったからで

気づかないうちに誰かとちゃんと係わって支え合ってきてんだよ

もし、お前が今まで自分一人で生きてきたって思ってんなら、それは勝手な思い込みだな。被害妄想もいいとこだ』


『なっ』


『自分一人が辛くて不幸だなんて思うな

果歩が知らないだけで世の中には辛い思いをしてる奴らなんでその辺に五万といるんだよ!

それでもみんな必死で頑張って生きてる。みんな表には出さないだけで自分の中で必死で何かと戦ってるんだよ』



そう言うと陽生の瞳は真っ直ぐ私を捕らえ


そんな陽生の鋭い瞳に私は奥底から怒りがこみ上げる



『もし、それでも本当にお前が人との関わりがわずらわしくて、誰もいらないと思うなら、無人島にでも行くことだな

そしたら何も気にする事無く一人でいられる』


フッと顔を崩した陽生が私のおでこをピンと軽く弾く


その顔は、口は笑ってはいるけど、目は鋭く真剣そのものだった



……ムカツク



『な、なんであんたにそんな事言われなきゃいけないのよ!!
あんたなんかに説教される覚えはない!!』



もう我慢の限界だった!


私はか〜となって陽生を睨みつけた