甘い体温



―saide果歩―



『…あのさ…悪いんだけど、私は別にあんたの事なんか好きでも何でもないの
だからあんたの気持ちには応えられない』


『うん』


『てゆーかむしろ嫌いなの』


『うん』


『だからさ…もう離して』


『うん…ごめん無理』


『……』



やたら静かで、二人の呼吸しか感じない部屋の中


私は陽生の胸に頭を預けながら、何度目かのため息を吐いた


あの後、あれからずっと陽生は私を抱きしめたまま放そうとはしない


私が少しでも離れようとすると、さらに逃がさないようにギュッと強く抱きしめてくるからどうすることも出来ない


それの繰り返しで


私はもうほとほと抵抗する気にもなれなくて、呆れかえっていた


なんかまた頭が痛くなってきたし


ほんと、こんな掴みどころのないタイプの男は初めてだよ……


『あのさ…私の話聞いてる?』


『うん』


『さっきから何度も言ってると思うけど、私はあんたと付き合う気はこれっぽっちもないの』


『うん…けど俺は好きだよ』



あ〜もう!!



一体どうすればこいつとまともに会話ができんのよ!!