私の声に振り返った朝丘。
次の言葉を紡ぐため、肺にいっぱい息を吸うと、
「お、霧矢!」
廊下の奥から、朝丘を呼ぶ声。
…タイミング悪いよ。
「おー!…じゃあな夕日。」
朝丘は私が両手でなんとか持っていたノートの山を片手で持ち、片手を振って返事をした。
「あ、うん。」
今日も言えなかった。
離れていってしまう背中に、
「朝丘っ!!」
「何。」
前みたいに無邪気に返事をしてくれないけど、無視することはしない。
「ありがとう!」
精一杯、笑顔でそう叫んだら、朝丘はすごい驚いた顔をしていた。
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