その擽ったさと、初めてのキスで息継ぎの仕方さえわからない息苦しさから、小さな吐息と共に口が開き、あっさりと彼を招き入れてしまう。
ぬるりと絡ませられた舌の感触に、ぞくっと腰に痺れが走る。
パニックのまま彗にされるがまま腔内を明け渡し、流し込まれるふわふわとした心地よさを享受していた。
「んっ、ふぅ……」
自分の甘ったるい吐息を耳にして、ふたりでキッチンの床に座り込み、頭も身体も蕩けるような口づけを受けている現状を、やっと脳が俯瞰で認識する。
羽海は力の抜けていた腕をなんとか持ち上げて彗の胸元を押し返した。
大した力ではないが、静止の意を汲み取った彗は不本意そうに眉間にシワを寄せながら離れていく。
「あの、あの……」
頭の中には聞きたいことや言いたいことが山のようにあるのに、突然奪われたファーストキスに動揺し、普段は口達者な羽海なのにひとつも言葉が出てこない。
「羽海」
戸惑うだけで拒絶の言葉を発しない羽海の頬を撫で、彗は懇願するような響きで名前を呼ぶ。



