天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


(どうしてだろう。お礼を言われただけで、こんなにも嬉しい……)

職場で患者に言われる「ありがとう」も、やりがいを感じて嬉しくなるが、彗に言われた威力は格段に違う気がする。

心の奥底が温かくなるのに、据わりが悪いような変な感じだった。

「明日は魚が食いたい」

照れくさく面映ゆい空気が漂う中、彗がぶっきらぼうに言い放った。

「煮魚ですか? それともフライがいいですか?」
「羽海が作るならなんでもいい」

聞きようによっては仲のいい恋人同士や夫婦のような会話に思えて、羽海は再びぎょっとする。

表情や声のトーンから、決して興味がなく適当な『なんでもいい』ではないと察せたからこそ、余計に彗の本心なのだと思えて擽ったい。

家庭的なアピールやプレゼント目当てだと思われていたこともあったが、今は純粋に受け止めているのだろう。

羽海の作る料理を気に入ってくれたのだと思うと、心が踊るように嬉しくなる。

浮き立つ心をなだめながら、何気ない表情を取り繕って「わかりました」と頷き、今なら聞けるかもしれないと、気になっていたことを口にした。