天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


術後に病院でシャワーを浴びてきたという彼が直接リビングへ来たので、すぐに料理を温めて配膳した。

「珍しくかぼちゃがないな。どういう風の吹き回しだ」

多少疲れた顔をしていた彗だが、テーブルに並んだ料理を見てクッと喉で笑う。

「今日くらいは。私だって鬼じゃないですよ」
「やっと気が済んだか」
「まだ怒ってますけどね」
「なにに怒るんだ。要望に応えてやったのに」

まだ半笑いでいる彗に呆れた顔を向けた。

まさか『愛してる』と言っておけば、羽海が愛されている気分になって結婚するとでも思っているのだろうか。

家事の対価として法外な値段のブランドバッグをぽんと渡そうとする彗ならあり得る気がした。

(ルックスも家柄も医師としての才能もあるのに、本当にどこか残念な人だな)

手術で疲れている彗を相手にそれ以上押し問答するのも躊躇われ、羽海は自分のアイスティーをグラスに淹れて彼の向かいに腰を下ろした。