彗がハッキリと羽海とは恋愛関係にないと言ってくれれば、一瞬で解決するはず。
とはいえ、なぜか必ず羽海と結婚すると言い張っている彗のことだ。一筋縄ではいかないだろう。
「俺の結婚相手は羽海なんだから、婚約者という表現は間違ってないだろ」
やはり羽海の予想通り、頑なにそう主張してくる。
「結婚というのは、愛し合う男女がするものです」
彗がなにを思ってあんな条件を出してきたのかは知らないが、羽海に対して恋愛感情を抱いていないことは確かだ。
いくら彗でも、こんな衆人環視で祖母が勝手に決めた条件付きの結婚だと公にする気はないだろう。
スキャンダルはご法度だと言っていたし、体裁は取り繕いたいはずだ。
羽海は会心の一撃を放つ。
「私は、私を愛していない人と結婚する気はありません」
嘘偽りない本音だ。どれだけ彗が魅力的な人物だろうと、愛されないとわかっている結婚をする気はない。
彗が恋愛感情を持たない結婚を望んでいるのならば、これでもう羽海に結婚話を持ちかけることもないだろう。
いいアイデアだと内心ガッツポーズをする羽海だが、相手は一枚も二枚も上手だった。



