しかし変更点は看護師側から言われたもので、こちらも書面で通告したのだ。羽海にまったく非はない。

「目障りなのよ。遊ばれてるだけの地味な女が彗先生の婚約者面して恥ずかしくないの? 誰にでもできる掃除しか仕事がない底辺のくせに。だいたいそのダサい作業着もうちの病院にそぐわないのよ」

(どうしてそこまで言われなくちゃいけないの?)

さすがに羽海の堪忍袋の緒が切れた。

彼女たち看護師のように直接的に患者の世話をしているわけではないけれど、病棟や室内を清潔に保ち、過ごしやすい環境を整えることだって立派な仕事のはずだ。

誇りを持って作業着を着て仕事をしているのを〝底辺〟呼ばわりされ、黙っている訳にはいかない。

これまで我慢していたのは、いい大人が職場で言い合いするのも如何なものかと考えていたのもあるが、ひとえにこの病院の理事長である多恵の顔が浮かんだからだ。

祖母の友人であり、羽海とも親しく話してくれた多恵のテリトリーで問題を起こすわけにはいかないと思っていたが、もう限界だった。

彗との噂で多少のやっかみを受けるのは諦めていたが、これはあきらかに行き過ぎだ。

元来、間違ったことはきちんと正したいタチの羽海は、言いたいことを飲み込むのが得意ではない。