幸い羽海はこれまで彗の周囲にいた派手な女性たちとは違い、メイクもファッションも華美ではないが清潔感があり、きちんと躾けられたであろう品のよさと、彗に反論する度胸も持ち合わせている。

御剣の親族や理事会の面々も、次期後継者の妻として文句はないだろう。

(ばあさんを安心して引退させてやるには、早く結婚して任せても大丈夫だと思ってもらわないとな。好いた惚れたと浮かれている場合じゃない)

医師としても経営者としても、勉強すべきことは山のようにある。時間はいくらあっても足りないのだ。

兄の隼人が頼りにならない以上、今後信頼できるのは己のみ。

彗は先程までの浮ついた気分を引き締め、唇を真一文字に結んだ。