天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


初対面の時は羽海が多恵に取り入ったのだろうと勝手に想像していたが、もしかしたら多恵も患者たちと同様、彼女と話すうちに真面目で優しい人柄に惹かれたのかもしれない。

『だから俺に勧めてきたのか』

ボソッと呟いたのが聞こえなかったらしく、ぽってりとした唇に華奢な人差し指をあてながら、きょとんとした顔で首をかしげた。

これまでの羽海の言動で、彼女が彗に好意どころか興味すら持っていないのはわかっている。

だから上目遣いで首を傾げたそのあざとく映る仕草も、なにも考えていないに違いない。

無意識だからこそ放たれる妙な色気が彗の欲をそそり、思わず目を逸らした。

『……それは卑怯だろ』
『ふふっ、卑怯って。パンプキンスープおいしいのに。そんなにかぼちゃが苦手ですか?』
『誰がかぼちゃの話をしてるんだ。それに苦手じゃない、嫌いなんだ』
『なにが違うんですか』
『苦手と言うとかぼちゃに負けたみたいだろ。俺がかぼちゃを嫌ってるんだ』
『子供みたい』

吹き出すように羽海が笑う。最近はこうして笑顔を見せてくれることが増えた。

自分が笑われるなんてこれまでの彗ならば不機嫌になりそうなものだが、相手が羽海だと悪い気はしないのだから不思議だ。