「話を戻しますけど。あなたは私が家事をするのを『無駄で不要』だと言っていたのに、私が勝手に作った食事をほとんど残さず食べてくれてますよね。それで十分です」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味です。私が家事をしているのは、家賃も払わずに居候しているのが気持ち悪いからです。あなたのためじゃなく、少しでも自分の気分を楽にするためです。それなのに、自己満足で作った料理を食べて、きちんとお皿もシンクに下げてあった」
「……それで十分だと?」
「はい」

やっと話が通じたのだとホッとして微笑むと、目を瞠った彗がこちらを凝視している。

(え、なに……?)

これまで見てきた、なんの感情も読み取れない冷淡な顔でも、ムスッとした機嫌の悪そうな顔でも、こちらをからかうような意地悪な笑顔でもない。

まるで信じられないものを見たかのように、ただひたすらに羽海の瞳を食い入るように見つめている。

徐々にその眼差は熱を帯びていき、羽海は息を呑む。

よく穴が空くほど見つめると例えるが、彗の眼差しは肌を焼く炎のように熱い。そのまま見つめ合うには胸が苦しくて、咄嗟に視線を逸した。