「干渉されるのは鬱陶しいと思っていたが、多少の嫉妬なら悪くない気分だ」
「なぜ私が嫉妬しなくちゃいけないんですか」
「俺の過去の女が気になるんだろう?」
「そういう意味じゃありません」
「拗ねるなよ。どんな付き合いだったか、教えてやろうか?」
「拗ねてませんし、興味もありません!」
くだらない言い合いに発展したが、楽しそうに笑う彗の顔から目が離せない。
眩しく感じるほど魅力的な笑顔を真正面から食らい、羽海の胸がキュンと音を立てた。
慌てて身体の向きを変え、サバの味噌煮を温めてテーブルに配膳しながら、なんとか体裁を取り繕う。
いくら結婚を申し込まれているとはいえ、恋愛感情を向けてくるなと言う男性に惹かれるなど不毛この上ない。
(考え方が壊滅的に合わない人に惹かれるわけがない。きっと顔が綺麗すぎるから、勝手にドキドキしちゃうだけ。反射みたいなものよ)
胸に手を当てて大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせた。



