ソファに座る羽海の膝の上に鮮やかな橙色の紙袋を乗せようとするので、慌てて立ち上がって移動する。
ついでに彗の食事を準備しようとキッチンへ向かうと、呆れたような彼の声が届いた。
「つくづく変な奴だな。普通女なら、好きに金を使っていいと言われればブランドのバッグやアクセサリーを買い漁るものじゃないのか」
「……変なのはどっちですか。女性に対してとんでもない偏見ですよ。私はブランド物に興味はありません。あ、サバの味噌煮と筑前煮を作ったんですが、食べますか?」
「食べる。自分で買わないにしても、プレゼントしてほしいと口に出さずに態度で示してくるだろ」
ネクタイを緩めながら首を捻る彗は、本気で女性にはこういったプレゼントをしておけばいいと思っているらしい。
まさか、自分もそうだと思われているのだろうか。あまりにも見当違いで、反論の声に多分に棘を含めて返した。
「私が家事をしてるのを勝手にプレゼント目当てにしないでください。相当おモテになるでしょうに、一体どんな女性とお付き合いされてきたんですか」
「気になるか?」
ニヤリと笑った顔が楽しげで、今まで向けられたどんな表情よりも親しげなそれに、図らずもドキッと鼓動が跳ねた。シュルリとネクタイを解く衣擦れの音がやけに耳につく。



