いつもよりかなり早い時間に帰宅した彗に驚きながらも「おかえりなさい」と声を掛けた。

すると、彗から誰もが知る高級ブランド店の紙袋をずいっと差し出された。

「なんですか? これ」
「家事の対価だ」
「はい?」

きょとんとした顔をする羽海に、彗は無表情で受け取るように顎で指し示す。

(え、私に?)

中に入っている大きな箱の中身はおそらくバッグ。ファッションに疎い羽海でも知っている人気のハイブランドで、バッグひとつで羽海の三ヶ月分の給料は吹っ飛んでしまうだろう。

恐ろしくて持ち歩くなんてできないし、羽海の日頃のファッションにハイブランドのバッグが合うとはとても思えない。

そもそも受け取る理由がない。

上体を後ろに反らせ、ブンブンと首を横に振る。

「いただけません」
「……なぜだ?」
「私には分不相応ですし、家賃の代わりにしていることに対価をもらっては本末転倒です」